真夜中に携帯電話を握りしめて、発信ボタンを押す寸前で、我に返る。
夜の寂寞は、時に人をおかしくさせると硯は思った。ベッドから起き
上がって、デスクの明かりを付ける。ひかりに照らされたカードが反
射していた。



眠れない夜は、いつだってデッキに手を付ける。カードに触れている
と安心する。繋がっていると思うことができる。月を見上げ、空で繋
がっていると思えるように、カードに触れることで、自分たちはバト
スピで繋がっている。



会いたいと思った時に、いつでも会えるわけではない。それはこの数
か月で十分味わった。自分以上に、世界を救った赤の戦士は多忙だ。
またやろうと約束した勝負の行方は、いつになるかは分からない。



誰かに会いたいなどと、今まで思ったことはなかった。当たり前に会
えることが多かったし、会いたくない人間の方が多かった。赤の戦士
とはきっと、共に過ごした時間の方が、会えなかった時間よりも短い。
それでも今、自分の心の中を占める割合は、誰よりも大きい。



カードから手を放し、携帯電話で「は行」から名前を探し出す。ディ
スプレイに映し出された番号とアドレスを、手袋越しにそっとなぞっ
た。電波よりも、繋がっていると確信できる。確かに、自分たちはカ
ードで繋がっている。かつて自分のためだけにあったバトルスピリッ
ツは、誰かと繋がる術となった。それだけで、胸の奥が熱くなる。



誰よりもお人好しで、誰からも慕われる彼が、自分を思い出してくれ
る時間は少ないかもしれない。それでもいいと思った。報われようが
なかろうが、自分の世界を変えてくれた彼に、今度は自分が恩を返し
たい。それだけはずっと思っている。毎日会えなくてもいい。けれど、
彼が折れそうな時、最初に手を差し伸べることができる人間でありたい。


胸が騒いで、思わず棚からカードファイルを取り出す。ファイルを開
いて、一枚ずつページをめくってゆく。一面の赤のXレアのコレクシ
ョンに手が止まった。薄明りの中、ジークと名の付く美しい龍を、真
っ直ぐ見つめる。目を閉じれば、鮮明に蘇るあの眼差しと、声。ゆっ
くりと、ファイル越しにカードに唇を落とす。こんなにもファイルは
冷えているのに、硯は確かに唇に熱を感じた。


2011415

繋がっているという確信。

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