全てを断絶する深い海の水底で眠るように、口を閉ざして、孤独と寄り添う。
硯秀斗の最後の神殿は、いつも薄暗く、窮屈だった。時間が経つのが恐ろし
く遅い。いつまでも鳴らないチャイムに祈りを込めながら、微動だせず、足
元の薄汚いタイルを眺め続ける。気が狂いそうだった。喉の奥が、つっかえ
たように息苦しい。学ランの上から胸元を押さえる。



どいつもこいつも、自分のことしか考えてない。自分の保守しか考えていな
い。道徳の授業でならったような、自分の身を犠牲にしてまで誰かを助けら
れるような、眩しく正しい人間なんてどこにもいない。英雄はどこにもいな
い。



もし、そんな人間が本当にいたならば、と床を睨みつけたまま硯は思う。も
し、誰かのために身を挺して動ける英雄がいるのならば、今すぐ助けてほし
い。ここから救い出してほしい。この牢獄から抜け出せることができたなら
ば、僕はその人のために何でもできる気がする。誰かのために何かできる気
がする。


チャイムが鳴る。


2011.4.6

硯はダンくんみたいなの苦手とか言ってるけど、
ほんとは一番憧れてるタイプだと思う。



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