胸の奥がざわざわと音を立てて、さざなみが寄せてはかえすように、感情が揺れる。
興味がないなど、嘘だった。あの時、自分はちゃんと素っ気なく振舞えていただろ
うか。誰の目にも、淡々とした態度として映って見えただろうか。



彼のようになりたくないと思ったのは、事実だった。あれほど愚かな人間を、自分
は見たことがない。もっと、利己的になればいいのだ。誰だって、自分が可愛い。
情けは人のためならず。嫌いな言葉だ。誰かに情けをかけたとして、自分に返ると
いう保証はどこにある。



彼のように自分はなれない。絶対になれない、なりたくない。


たとえば、あの地獄の日々の中で、自分に浴びせられる罵声と嘲笑の前に立ちふさ
がって、彼が盾になってくれていたならば、自分はもう少し誰かのために自分を投
げ捨てる力を得ることができたのだろうか。馬鹿馬鹿しい例え話だ。本当にくだら
ない。もしもだの、たとえばだの、そんな絵空事。



「……僕だって君に」


天蓋付きのベッド、白いシーツの上で蹲りながら、硯秀斗は呻くように呟いて、眉
を寄せた。



2011.4.4

青嵐帝就任の辺り。
掴めそうで掴めないなあ、二人の関係……



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